2020年度決算から杉並区のコロナ対策をみる

NPO法人まちぽっとが主催する「自治体財政セミナー」で杉並区のコロナ対策について報告しました。このセミナーは4回シリーズで1・2回目は自治体財政基礎編を学び、3回目は東京都におけるテーマ・事業別予算について、そして4回目はコロナ下における自治体財政ということで東京都や杉並区、福生市の2020年度決算について報告するというもの。自治体の決算はその翌年度の秋の議会で議論し認定されますので、現時点で明らかになっているのは2020年度決算となります。私からは、その年度の杉並区のコロナ対応について報告。

2020年2月末に区内で最初の感染者が確認され、3月の半ばころから少しずつ感染者が増え始め、2020年度が始まる頃は感染拡大に危機感が募る状況になりつつありました。4月~5月と年明けの1月~3月に2度の緊急事態宣言が発出され、得体のしれない新型コロナウイルスに翻弄させられた1年でした。

〇2020年度杉並区のコロナ対策

2020年度、杉並区ではコロナ対策を中心に過去最多となる14回の補正予算が組まれ、最終的にコロナ対策費の決算は約650億7,600万円に。その財源内訳は国が約603億3,400万円、東京都が約26億800万円、区の一般財源からの持ち出しは約20億9,400万円、そのほか、区民などからの寄付金約4,000万円となっています。たくさんの寄付を寄せてくださった区民の方々に感謝!国からのお金が多くを占めていますが、そのほとんどは1人10万円の特別定額給付金であり、その額577億5,400万円。国や東京都の対応が遅れるなど、区が先行して対応することも多く、緊急の場合に備えて積み立てている「財政調整基金」から64億円の取り崩しを行いました。

〇自由度が高い「地方創生臨時交付金」はどう使われたか

セミナーでの報告の主旨はそれぞれの自治体が独自の発想でコロナ対策にどのように財政を振り向けたかということ。杉並区は国の「地方創生臨時交付金」を約20億円活用。23区は、その交付金は東京都を経由してくるため、都の支出金として処理されています。毎年、決算時に発行される杉並区の区政経営報告書のP18にはコロナ対策でどのような事業に予算が使われたかの一覧があるので、ぜひ参照してみて下さい。

区政経営報告書2021_p001_p099.indd (city.suginami.tokyo.jp)

この「地方創生臨時交付金」は感染拡大防止や地域経済を支援するために幅広い事業に活用可能であり、医療体制強化・医療従事者支援や感染症予防対策、区内中小事業者等への支援、教育・生活・福祉・子育て支援など多岐にわたり活用されていることがわかります。

〇2022年第1回定例議会が始まりました

2月9日から第1回定例議会が始まっています。2022年度の予算編成方針とその概要が区長から提案され、それに対する各会派の代表質問(9・10日)が終わったところです。この議会では予算について集中して審議する予算特別委員会も3月3日から開催されます。

なお、上でリンクを貼った資料のトップに出てくる「入院・外来医療体制強化事業」ですが、これは2020年度の4月に、国や東京都に先んじて区で行った区内の基幹病院への包括支援約17億1千万円の補助を行ったというもの。当時、かなり思い切った対策を打ち出したなという印象でした。その時からお約束だった包括支援補助の検証報告書が3月には出てくるとのこと。感染者急増に伴い地域医療の崩壊を防ぐため、病院経営を支えるための補助や区内医療機関に対する発熱外来に従事する医師の確保などの経費に予算化されたものでしたが、実際にどのように活かされ、効果はどうだったのか、その報告書を待ちたいと思います。