新型コロナウイルスが私たちにもたらしたもの①

新型コロナウイルスによる社会的影響は医療、介護、生活、経済、教育、就労など多岐にわたり、世界中の誰もが初めて経験する危機に直面し、不安と恐怖に包まれました。杉並区では2月18日に区内医療機関の入院患者から感染者が発生し、身近に迫っていることを実感しました。その後、2月26日に1人の区民の感染が確認され、以降、徐々に広がりを見せ、6月5日までに265人の方の感染が確認されました。日ごとの感染状況は区のHPでも公表されていますので、ご覧になられていた方も多いと思います。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、り患された方の一日も早いご回復を願っています。

生物多様性を甘くみてはいけない
この新型コロナウイルスの問題を一歩引いて見ると、これまでの私たちのあたりまえと思っていた暮らしや経済のあり方の問題点が浮かび上がります。
この間、今回のコロナに限らず、エイズやエボラ出血熱、SARSなどの新しい感染症が発生。これらは、もともと野生生物の体内に存在していたウイルスが人間に感染したということで知られています。ウイルスは自分一人では生きていけないため、野生動物のような宿主と共存してきたということです。つまり、宿主にも生き続けてもらわなければならないため、相手を弱らせたり、殺したりはしないのだそうです。その話を聞いた時、自然の営みの奥の深さを感じ、妙な感動を覚えました。
この新型コロナウイルスの問題を考えるとき、目先の対応だけでは本質的な解決にはならないのではないかということに思い当たります。人間の開発行為により自然破壊が進み、生物多様性を損なってきたことが根本原因となると、そこまでさかのぼって社会の在り方を考え直さなくてはならないということだと思います。人間による野生生物の過度な利用も原因の一つとも言われています。
熊や鹿、いのししが人々の生活圏に出没し、悪影響を及ぼしていますが、動物たちにとっては迷惑な話であって、そもそも、人間が野生動物たちの生活圏に近づいて行った話なのだと思います。ウイルスにとって、生き残るために宿主を人間にも広げざるを得ない事情もあるように思います。そして、グローバル化によって、あっという間に世界中にウイルスが伝播してしまう怖さを、今回のコロナ禍で改めて実感しました。どこから見直していけばよいのか、大きな課題を私たち人間は突き付けられています。