捨てればごみ、活かせば資源!ファイバーリサイクルの現場を訪ねる①

ウエス用として出荷を待つ山積みされた古布の前で

環境保全を目的にしたチャリティショップ(=市民から寄付された、まだ使える物品をボランティア等の協力を得て販売し、その収益を非営利活動に活用するショップ)を運営している環境NPOの企画で、神奈川県秦野市にある古布・古着をリサイクルのために選別している工場(本社:ナカノ㈱@横浜市)を訪ねました。1934年創業の今年88年。リサイクルということが言われ始めたのは1974年ということなので、リサイクル業者としては老舗中の老舗と言えよう。当時はボロ屑を集めて洋紙に。木材パルプから紙になるのはずっと後のことだとか。昔は各家の中でリサイクルが完結していたし、日本は江戸時代から当たり前にリサイクルが成り立っていて、リサイクルしやすいように作られている着物はその最たるもの。

●化学繊維の登場で状況は一変した

日本では1950年ごろから化学繊維が普及し始め、事前環境に生産が左右されがちなウールや綿、絹などの高級品と違って、石油から作られる工業製品として大量生産で安価化が可能に。大量消費により衣類のライフサイクルも短くなり、ごみ問題へと発展していくことに。今では当たり前にある古着屋ですが、1970年ごろは「古着」のイメージは時代に逆行、使い古しなんて…と嫌厭され、リサイクル業界にモノは集まるが国内ではちっとも売れず、海外への輸出がほとんど。国内では再び繊維に戻して原料にする反毛を施し、衣服にしたり、フエルトにして車の内装材などにしていたそうです。

●輸入衣服の半分は売れずにごみになっている現実に驚愕

日本でどれだけ古着が出ているか、実は国も業界もわからないらしいですが、輸入された衣服の半分は売れ残りで捨てられているという話にはショックです。服飾だけで年間130万tとも言われており、平均ひとり当たり10㎏捨てている計算に。特に若い世代に多く、秦野工場に集まってくるTシャツでいうと1日に男性用で100㎏、女性に至ってはその3~5倍の量が出ると言います。女性ものが圧倒的に多いというのは百貨店の売り場面積や自宅のクローゼットの中の割合からしてもうなずける訳で、私自身も耳が痛い話です

●7割は燃やされている!

行政回収をしていない自治体が7割もあり、そこからの推定値ですが、回収している自治体でも捨てられている衣類は相当あると思うので、厳密に言えば回収できている割合はもっと低くなると思われます。

現在の回収方法としては①行政回収:一番多く集められる(全体の約90%)しくみですが、内容にバラつきがあるのが課題②集団回収:意識があって参加してくるのでリサイクルしやすいものが集まる③店頭回収:始まりは高島屋、その後、様々な店舗に広がり一躍ブームになりましたが、今やSDGsやCSRの観点からmustになってきているとのこと。

●中古衣料として売れるのは春夏ものだけ

集まってくる古着はまだ着れるものばかりだけど、海外に輸出できるのはその内の約40%。古着を必要としている国々は赤道付近が多く、それ故、需要は夏物。冬物は反毛材にしかならず、あまりお金にもならないので、古着としてたくさん捌かないと経営的には厳しいということもわかりました。集められた冬物にはまだ十分着れるコートやスーツが沢山ありました。冬物の古着を流通させる何か良い知恵はないものかと考えてしまいます。

つづく