屋根のある公園みたいな居場所”笹塚十号のいえ“
今年度から仲間のグループと連携した“空家を活用した「地域の場づくり」に関する調査研究会(以下、研究会)“にメンバーとして参加しています。研究会ではまずは都内で空き家や空き店舗を活用した居場所事業の現場を訪問、ヒアリングをするところから始めることとし、7月4日に1か所目となる”十号のいえ“を訪ねました。京王線笹塚駅から渋谷区側に延びる十号通り商店街の一画にあり、以前八百屋さんだった跡を改装して、ふらっと立ち寄ってお茶を飲んだり、おしゃべりしたりできる屋根のある公園みたいな居場所。そう語るのは一般社団法人TEN-SHIPアソシエーション代表理事の戸所さん。ここが面白いのはNPOや大学、一般社団など10団体で運営していること。家賃もそれなりの金額のようでしたが、それらの団体で負担し合うことで、持続可能な経営が成り立っています。改装費などのために募ったクラウドファンディングでは目標を大きく上回り、顔の見える関係者の支援で賄えたことも特徴と言えます。
お話を聴くと、いきなり十号の家にたどり着いたわけではありません。中心的存在の戸所さんはご家族の病がきっかけで介護の世界に転職し、地域包括支援センターの職員を12年経験した中で、様々な複合的な課題を抱え、対応が難しく、必要な支援が届いていないという課題にぶち当たっていました。そんな中、2015年に社協と連携して“ささはたカフェ”を立ち上げ、近隣3つの商店街を月1回めぐる取組を始め、地域を面でとらえることの必要性を見出したそうです。
その後、縦割りが嫌で退職をし、生活の中での困りごとをお手伝いする“まちのお手伝いマネージャー”を始め、20名ほどのボランティアが様々なサポートを担っているそうです。まさに、私も関わっている“まちの縁がわほっとスペース”でやっているほっとサービスと同じ発想です。お手伝いマネージャーの活動を通して地域を耕す中で長年続いた八百屋さんが閉店するとの情報が入り、その跡を継いで”十号のいえ“を開設。十号通り商店街の中には”十号のいえ“やお手伝いマネージャ‐の受付窓口になっている商店街の事務所”十号いこいの場“、渋谷区が地域の団体に貸し出している小さなスペースもあり、活動しやすい環境にも恵まれていると感じました。また、戸所さんは社会福祉士であり、ホームヘルパーであり、主任介護支援専門員(主任ケアマネ)であり、専門性も活かした幅広で奥行きの深いサポートができているのも、強みの一つだと感じました。
お訪ねした時は男性のお客さんが多かったのですが、区のスペースでお話を伺って”十号の家”に戻ると、今度は女性のお客さんで賑わっていました。いろいろな方々が行きかう場になって、イベントの開催や近くの小学校との連携も。課題については、常連の居場所にはなってきたが、その分、新しい人が入りにくくなっているのではないか、子どもが気軽に立ち寄れる場所ではなくなってきてはいないか、来た人同士の交流も良い面がある一方で喧嘩が始まることもあり、スタッフ(お留守番さん)のスキルも必要となるなども見えてきているようです。
色々と参考になるお話も聞けて、研究会はもとより、私も関わっているまちの縁がわの仲間たちとも共有していきたいと思います。