巣立ちを一人にしないまちへ

 2月15日午後、区役所内で開催された「児童養護施設退所者等応援基金報告会」に参加しました。

杉並区は2024年度から「児童養護施設退所者等支援事業」を開始。市民からの寄附を原資に、児童養護施設や里親家庭などから自立する若者の新生活を支えるため、転居費用や家電購入費等として上限20万円の自立支度金を支給しています。

初年度は104件・3,028,836円の寄附が寄せられました。しかし実際に支給できたのは6人・1,140,989円にとどまり、残額は一般会計で処理されることに。この課題を踏まえ、寄附金を確実に目的へ活用するため、2025年度から「児童養護施設退所者等応援基金」を設立し、運用がスタートしました。

●社会的養護にある子どもたちの現実

報告会前半では、武蔵野大学人間科学部社会福祉学科の永野咲准教授による「子ども・若者の人生を支える社会的養護」と題した講演がありました。

2023年度の児童虐待相談件数は225,509件。そのうち30,814件(13.6%)が一時保護、4,524件(2.0%)が施設入所等の措置につながっています。直近では初めて虐待件数が減少したとの報告もあり、予防的取組の効果が見え始めている可能性があるとのことでした。

しかし依然として年間4,500件以上の子どもが施設入所等の措置を受けているという現実は、社会全体で受け止めなければならない深刻な課題です。

●退所後こそ、支援が必要

驚いたのは、社会的養護を離れた後の若者の実態を国が把握していなかったという事実です。2020年度に初めて全国調査が行われましたが、連絡先不明等により調査票が届いたのは対象の35.6%、最終回答率は14.4%にとどまりました。

一方、永野准教授が関わるIFCAの独自調査(2020年)では、39都道府県から425名の回答が寄せられ、食糧確保の困難、経済的困窮、医療や精神的ケアの不足、希死念慮、頼れる人がいない孤立など、深刻な実態が明らかになりました。

単なる経済支援だけでは不十分であり、「人とのつながり」や「情報へのアクセス」を含む伴走型支援の必要性を強く感じました。

2024年には児童福祉法が改正され、社会的養育経験者への自立支援強化が位置づけられました。また、国は「社会的養護経験者等への支援に関するガイドライン」を策定し、安易な措置解除を行わないことや、希望に応じた措置延長の徹底などを明示しています。

●杉並区のこれから

杉並区には児童養護施設が5か所あります。各施設からの現状報告では、就労支援や生活支援など具体的な取組が紹介されました。

今年11月には区立児童相談所が開設予定であり、自立支援拠点事業も進められます。基金の活用とあわせ、退所後も切れ目のない支援が実現できるかが重要です。

どんな状況にあっても、子どもの権利が保障され、安心して育ち、学び、暮らしていける社会へ。行政だけでなく、地域として何ができるのかを考え続けたいと思います。