女性や子どもが「ここに住みたい!」と思えてエンパワーできる住まいとは
今年の夏、DV被害や社会的困難な状況にある女性と子どもの支援について、30年以上取り組んでこられた“ウィメンズネット・こうべ”の正井礼子さんを訪問。これまでの取組の集大成とも言える女性と子どものための自立支援住宅「ミモザハウス」を見学するのも目的の一つでした。女性や子どもが「ここにしか住めない」ではなく「ここに住みたい」と思える住まいをつくろうと生協の施設を改装して、2~4階に40室を整備。内装インテリアはIKEAと組んで明るくおしゃれな部屋で、コミュニティカフェやランドリールーム、シェアオフィス、学習室、相談室等が備わっていて、とても居心地のよさそうなやさしさに包まれているような雰囲気だったのが印象的でした。長年DV女性の支援の中で独りぼっちで悩む女性、私には帰る家がないという声をたくさん聴いてきて、いかに孤立をさせないか、相談場所だけあってもダメ、住まいとセットでないとダメだと考えたとのこと。安心できる住まいがあってこそリカバリーできる!その通りだと思いました。
●子どもへのケアも忘れない!
また、DV家庭で育つ子どもへの影響は深刻で、怒鳴り声は6倍子どもの脳に影響するとのことで子どもへのケアにも注目し、世代を超えて連鎖させないために子どもへのカウンセリングも重要視。玄関を入るとキッズスペースがあって、親子が自由に交流でき、絵本やおもちゃ、宿題ができるようなコーナーがあり、孤立させない工夫は大事だと思いました。
今年の6月に開設したばかりのため、視察時は8世帯が入居でしたが、入居にあたっては事前に面談を行い、その危険度によってシェルターの方が良いのかなど判断するとのこと。生活保護の申請も支援するが、自立に向けて働く意欲のある人が基本対象に。ステップハウスの位置づけのため、3年で退所しなくてはならないからです。3年の間に離婚の成立、次のステップに向けた経済的な蓄えなどのために手続きの同行や就労支援なども行っています。
●冷たい国・自治体・企業
ミモザハウスの開設までには資金面でも大変なご苦労があったようです。改修に必要な資金は国の補助金を活用していますが、申請の際は1.8億円(内2/3が国の補助金)だったものが、人件費や資材高騰などの影響で最終的には2.8億となったとのこと。国からは当初通りしか出ないため、休眠預金や財団、クラウドファンディングなどを駆使して資金を集めたとのこと。企業にも寄付の呼びかけをしたものの、反応したのは1社だけ、その1社も株主に共感を得られないからと断られたそうです。日々の運営にも行政予算はゼロとのことで、財団からの助成金が助けになっているとのことでした。
海外で見てきた事例やこれまでの取組から出る正井さんの言葉ひとつ一つが心に響いたし、遅れをとっている日本のジェンダー問題を本当に何とかしたいと改めて考える機会となりました。