条例を使いこなす

杉並区では子どもの権利条例制定に向けて、約1年の審議会を経て、先月7月に区長に答申。9月10日から始まる第3回定例会に条例骨子案が示され、その後パブコメを行い、年明け第1回定例会にて条例案が審議される予定で進んでいます。その議論の参考になればと、12年前に条例を制定し、子どもの参加や市の施策の検証・公表のシステムを構築している大阪府泉南市を視察しました。条例ができるまでと、公立小学校での取組み、市民も参加する条例委員会や市民モニターの取組について話を聴くことができました。市長の公約で実現したことや「子どもにやさしいまち」をめざすところも杉並と同じだと感じました。

●子ども参加の実態づくり

子どもの意見表明や参加のあり方の工夫については、泉南市立鳴滝小学校の奥田校長先生の話をとても興味深く伺いました。市内すべての小中学校にその意識が広がっている訳ではなさそうでしたが、「子どもが安全で安心して暮らせるまち」「子どもの居場所があるまち」「子どもが参加できるまち」を常に意識し、子どもの権利に関する積極的な教育を教育課程などに位置付けて実施しており、児童会や委員会活動を通して子どもの意見を大切にして自分たちで学校をつくっているんだと実感できる活動は杉並区においても今後外せない取組だと思いました。自分たちが出した声や意見が実現していく達成感を経験することは自己肯定感を高める意味でもとても重要です。

●具体的な取組も興味深い

「お悩み相談BOX」に児童会役員が応える取組みや、Googleフォームを活用した子どもの相談窓口「校長先生『そうだん』があります」を開設し、子どもたちのタブレットから24時間入力できるようにしているしくみも面白いと思いました。また、子ども会議も小4~18歳までを対象に毎月1回土曜日に開催していて、子どもの権利学習や泉南市をよくするためにできることを子ども目線で考えて実行する、子どもの声を市長に届ける活動も重要な取組でした。子ども会議に人が集まらなかった時に、どうしたら集まるかをみんなで考え、対象の枠を小4まで広げようとか学校で募集チラシを配る際にただ配るだけでなく、先生から子ども会議について一言添えてもらうことを提案し実行したら、20~30人集まったという話には、子どもに言われる前に”先生ちゃんとやって頂戴!”と思わず心の中で呟いてしまいました。

●条例の実施をきちんと検証!

また、条例第16条にある通り、条例の運営状況と実施状況を市が検証するために条例委員会は活動し、市長に対して報告等を行い、市長はそれを公開することとされています。また、市民モニター制度には大人モニターと子どもモニターがおり、条例委員会と相互に協力・連携して条例の運営状況を検証するための活動を行うこととなっていました。今回報告していただいたお二人は市民委員で、条例案検討委員から関わってこられた方々。条例制定10年までは子どもの権利や条例のことを広く認知してもらうことを優先課題としてきて、実績も挙げてきたが、2022年3月に中学生が自死するというでき事が起こったことを受け、市長や教育委員会、第三者委員会とのやり取りを通して教育委員会や行政の中で子どもの権利が共有理解されるものとして継承されていない現状が明らかになったとのこと。条例の形骸化、絵に描いた餅と厳しい指摘を市長に報告しています。条例委員会報告は第12次まで出ており、毎回膨大なページ数で厳しく市や教育委員会を評価している点に本気度が感じられました。今後はオンブズの設置も検討していくようです。

条例の前文には小学生が起草した「泉南・子ども憲章」が引用され、さらには2002年5月の国連子ども特別総会に世界から集まった374人の子どもたちが書き上げたメッセージも掲載されています。条文も平たいわかりやすい言葉で綴られており、子どもたちにも理解しやすいものとなっていました。今後、杉並区の条例案も示されてくる中で参考にしていきたいと思います。