改めて気づかされた視覚障がい者の困りごと②

2回目は8月、「ユニバーサルデザイン(UD)と視覚障がい者」がテーマ。

UDは米国の建築家で工業デザイナーであるロナルド・メイス氏が1980年に提唱し、年齢・性別・国籍・個人の能力にかかわらず、最初からできるだけ多くの人が利用できるように都市や生活環境をデザインすること。アメリカでは1964年に人種や肌の色、信仰、性別、出身国による差別を違法とする公民権法ができ、公民権運動が勝ち取ってきたという歴史があります。それが障がい者にも影響を与え、1990年に障害を持つアメリカ人法ができて、雇用、公共サービス、公共施設、通信に関する差別禁止規定が盛り込まれ、障がい者が米国社会に完全に参加できることが保証されています。とはいえ、全ての製品やサービスが対象となっていなかったため、不十分でもありました。そこで、ロナルド・メイス氏は「障害者のため」という発想から「あらゆる人のため」に転換し、障がい者を特別視せずに、あらゆる人が快適に暮らすことができるデザインとしてUDを提唱したと言われているようです。一方、日本では、UDの概念だけが入ってきたことや差別を禁止するのではなく、解消するというスタンスがUDの正しい理解が浸透しない要因ではないかとも。

UDには7つの原則があります。

  • 公平性:誰にでも公平に利用できること、市場性のある設計
  • 柔軟性:使う上で自由度が高いこと
  • 単純性:使い方が簡単ですぐわかること
  • わかりやすさ:必要な情報がすぐに理解できること
  • 安全性:うっかりミスや危険につながらないデザインであること
  • 省力性:無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
  • スペース確保:アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること

バリアフリーとは真逆な概念です。バリアフリーは文字通り、障壁の除去といったスタンスで、主な対象となるのは高齢者や障がい者で、その場その場のバリアを解消するので、まち全体を見たときにはちぐはぐになることも。そのため、これから新たにつくる施設や道路、街並みにはUDが前提でなくてはなりません。

比較的最近に改築された高井戸地域区民センターを例に、検証しました。1階の受付の後の導線がわからない(改善はされた)、2階以上のフロアの廊下がカーペット敷きのため、自走式車いすはとてもつらいこと、トイレの位置がわかりずらく、女子トイレと男子トイレを間違えてしまうなどが指摘されました。当事者に本当に聞いた設計になったのか疑問です。

以前に私もモニタリングについて質問をしたことがありますが、その場に当事者をお連れして、「さぁ、どうですか」というのではなく、館内を自由に動き回ってもらって、どこが不都合だったかやどこは良かったということを細かく聞き取ることによって、はじめて、良い環境整備につながるのだと思います。また、視覚障がい者でもロービジョンか全盲か、あるいは独り歩きをする人かガイドヘルパーなどの付き添いと歩く人ではバリアのとらえ方が違うということをお聞きしました。なので、障がい者に意見を聞くという場には、さまざまな障がい者の参加があるということも必要です。また、UDを理解する当事者育成も重要だと。もちろん、周りの私たちも区の職員もよくよく理解していくことが重要です。一度つくってしまったハードをつくりかえるのは大変なので、やはり、設計の段階できちんと当事者の声が反映されることが必要です。また、ハード面だけでなくソフト面も含めた取組みが必要です。羽田空港は受付にしか点字ブロックはないそうです。受付にさえたどり着ければ、あとは行きたいところにスタッフが案内してくれるそうです。なるほど!ある意味合理的かもと思います。

杉並区バリアフリー基本構想(2013~2021)の検証とともにバリアフリーからUDへと政策転換がなされるよう働きかけていきたいと思います。