いのちをいただくということ 芝浦食肉屠畜場の見学

NPO法人CSまち・デザインが企画した東京都中央卸売市場食肉市場の芝浦と場の見学に参加しました。通常の市場見学ではセリ場とお肉の情報館止まりのところ、特別な計らいによりと場内部にまで入れていただき、私たちがいつも食べている牛肉や豚肉の屠畜の現場を視察。とても貴重な体験となりました。

以前にも食肉の解体現場や鶏の屠畜は見学したことがありましたが、牛や豚の屠畜は初めて。「いのちをいただく」神聖な気持ちでしっかりと目に焼き付けて来ました。

小動物(豚)と大動物(牛)と別々の棟に分かれていますが、と畜の流れは3日(けい留・と畜・検査保管)にわたります。その後、枝肉の格付けが行われ、卸売業者によってセリにかけられ、仲卸業者や売買参加者に枝肉で売られて、小売店や加工業者を経由して私たちの食卓へと届くことになります。一日あたりのと畜可能数は牛で430頭、豚で1400頭。都内の食肉市場はここだけです。

白衣に長靴、ヘアキャップにヘルメット、説明用のインカムを着用していざ、と場内へ。場内では衛生管理上お湯をたくさん使うため、すごい湿気で、かなりの騒音の中での作業。ゆっくり動くラインにたくさんの作業員が1つ1つの工程を丁寧かつ機械的にすすめていました。夏場は40℃以上、湿度90%の環境下でかっぱ着用での仕事はかなり過酷なものだと容易に想像できます。体力が採用の条件だということに納得です。豚に限っては女性も現在7名が働いているそうです。

おおきな流れは豚も牛もほとんど同じですが、牛は約700kg、豚は約110kgと大きさが全く違うため、迫力に違いがあります。すぐ目の前を逆さ吊りされた牛や豚が横切っていくので、ぶつからないように、足元も滑りやすくとても神経を使い緊張しました。

牛は額に空砲銃撃で、豚はガス麻酔により失神状態にして血を抜きます。その後、足や頭を落とし、皮をはぎ、内臓を取り出し、半身の枝肉状態になるまで、牛は50分、豚25分だそうです。皮や内臓も商品として扱われるため、丁寧な仕事が要求されます。作業は班ごとに分かれていて、1人の少しずつの工程の連続ですすみますが、作業員は全ての工程が出来るようになっているようです。そしてBSE問題でも注目された背割りの作業は10年以上の熟練の技術が必要とされ、ある意味、この仕事の花形だそうです。大きなカッターで牛の背骨を真ん中からカットしていくのは個体差もあり簡単ではないそうです。

場内はすべて撮影禁止。写真でお見せできないのが残念ですが、これは働く人の人権を守ることにも起因しています。食肉処理業務に対する差別や偏見が未だ存在していることに驚きを覚えます。悪質な誹謗中傷の手紙やネットへの書き込みなど、卑劣な差別行為が今も頻発していることから、この人権問題にとても心を砕いているのが印象的でした。

私たちの豊かな食卓が食肉処理業務に携わる多くの方々によって支えられていることを改めて実感。けい留場の牛や豚たちは明日の自分の運命を知ってか知らずか…でも、この子たちのいのちで私たちは生かされているのだと、ありがたくいただくことを忘れてはいけないと思います。