東京にこそ広めたい「グリーンインフラ」①

学習会『”あまみず社会”って、なに~グリーンインフラのまちづくり~』講師の島谷幸弘さんを囲んで

1月20日東京・生活者ネットワークの環境部会が主催する学習会『”あまみず社会”…って、なに~グリーンインフラのまちづくり~』に参加しました。講師は九州大学大学院教授の島谷幸弘さん。杉並を流れる善福寺川を里川に変えようと活動する「善福寺川を里川にカエル会(=カエルの会)」の会長でもあります。堀ノ内の済美公園は善福寺川の近くまで降りられる親水型の公園ですが、その整備や井荻小の善福寺川を題材にした環境教育にも関わり杉並とも縁の深い先生です。私は以前にも島谷先生のお話を聞き、昨年の第1回定例会でも“あまみず社会“”グリーンインフラ“について一般質問で取り上げました。

「カエルの会」に込めた思いから始まったお話。カエルは両生類で水と森がないと生きられないため、カエルがいるということは環境をはかる大事な指標だと。人間も夢と現実両方ないと生きていけないから人間も両生類なんだと。水害から守るために川の護岸をコンクリートで固めてしまったり、東日本大震災の復興では15m近い防潮堤が海と町を隔ててしまった光景を目にしたときは私も悲しい気持ちにさえなりました。先々将来のことを考えれば「安全」の確保だけでは人間は生きていけないとの考えに至極納得。

東日本大震災の復興は土木の敗北だと先生は言い切ります。防災・減災計画には防災の専門家ばかりで環境の専門家がいないとも。大変な被害であるほど、安全を第一が優先され、長期的な展望や夢のような話はできないため、コンクリートで固めてしまうような「グレーインフラ」で殺伐とした温かみのないまちづくりになってしまいました。それに対して生態系の仕組みを使い、自然の恵みと共に社会と経済に寄与する国土形成手法が「グリーンインフラ」。

「グリーンインフラ」は1990年代の半ばにアメリカで提唱され、2000年代中盤ごろから欧米で本格的に始まったそうです。日本ではまだまだで、国交省の政策にやっと入ったという段階です。それでも島谷先生は「グリーンインフラ」で水害のあった集落の復興の事例をつくり、結果住民の豊かな暮らしを取り戻し喜ばれている事実に希望も見えました。タイやシンガポールなどアジアでも始まっており、まさにこれからは「グリーンインフラ」の時代。日本もぼやぼやしていられないが、間違った「グリーンインフラ」にならないようにしなければならず、みどりや生物多様性が活かされ、文化のかおりのする「グリーンインフラ」を住民参加のしくみとセットでやっていくことが重要だということです。

洪水を防ぎ、CO2を固定し、蒸発散によりヒートアイランドを防ぎ、大気汚染を抑制し、健康増進に役立ち、不動産価値を高めるなど、複合的な価値や多機能をもち、コスト的にも耐久性からも持続可能であることから都市こそ「グリーンインフラ」が有効だということを改めて確認しました。次回はあまみず社会について取り上げます。