消えた種子法!私たちの食糧安全保障は大丈夫?②
日本では幸いにも私たち消費者の反対によって遺伝子組み換え作物の生産はまだされていませんが、世界では遺伝子組み換え作物の栽培が広がっています。世界中の種子企業の買収が行われ、世界の種子市場の6割以上が6つの遺伝子組み換え企業によって独占されてしまいました。バイオ技術はどんどん進化していて、遺伝子組み換えやゲノム編集などつくりたい性質をいとも簡単にできてしまう時代。植物と動物が交配することは絶対に自然界では起こりえないことを遺伝子組み換えでは可能です。これまでは様々な性質の作物をかけ合わせながら、何年もかけて自然の摂理にかなった方法で目的の品種に改良してきた営みに意味がなかったのでしょうか。農家が「種子」を自家採取しながら農業を営んできたことも多国籍企業が「種子」に特許をかけて、自由な農業を阻んでしまうことも起こりうることです。
これまで公的に支えてきた品種や農家が守り続けてきた品種の「種子」が徐々に姿を消し、将来、多国籍企業の「種子」しか選べなくなるかもしれません。私たちが生協の共同購入運動を通して、こういう米や野菜がほしいと日本の農家と関係性を築きながら手に入れてきた取組みも水の泡となることを危惧します。
民間企業にゆだねることで種子品種の多様性が失われることも不安です。たとえば、日本の「米」は現在、300品種あり、その地域特有のブランドになっていたり、その地域や気候風土に合った品種が供給され続けてきたわけですが、これは国や都道府県の責任において守られてきたからです。それが企業の手に渡る訳ですから、多品種を維持するコストや手間の負担より、同じ品種を効率的に広めることで利益を上げていくことになるでしょう。しかし、単一の「種子」では病害虫の発生や気候変動による被害の拡大などのリスクも大きくなる可能性もあります。リスク分散を考えれば色々なリスクに耐えうる品種を持っておくこと、そして何より国民のいのちを守る「種子」は国の責任においてきちんと守っていくことは食料安全保障上大事なことだと思います。
今、私が所属している生活クラブ生協では、この「主要農産物種子法廃止に反対する声明」(2017年4月)を発表し、主要農産物種子法に代わる公共品種を守る新しい法律を作ることを求める署名活動にも取り組んでいます。