これからの医療・介護はどうなる?
老後が心配!
杉並区消費者グループ連絡会が開催した「これからの医療・介護はどうなる?」と題した学習会に参加しました。講師は全国保健医団体連合会事務局の寺尾正行さん。具体的でわかりやすいお話でしたが、それ故に老後への不安が一層現実的になってきました。
団塊の世代が全員75歳以上となる2025年が日本の高齢化のピークと言われています。国もそこを照準に社会保障制度の改革をすすめており、私たちにとっては厳しい方向に向かっていることは間違いありません。保険料や利用料の負担がどんどん増し、受けられるサービスは縮小される、いったい私たちは何をよりどころに老後の安心を見出せばよいのか不安は募るばかりです。
今年の4月から介護保険制度の要支援1・2が介護給付から外され、自治体の日常生活支援総合事業に移行されました。それぞれの方が実際に新事業に移行するのは今年4月以降に認定更新がされる時からとなります。すでに更新を迎えた方がこれまでとサービスの内容が変わるのか、変わらないのか、また、認定の出方がどうなのか見ていかなくてはならないと思います。そして、さらには今後、要介護1・2の生活援助などの在宅サービスを要支援1・2と同様に区市町村ごとの日常生活支援総合事業に移行する準備がすすんでいます。このことには生活者ネットワークは反対し署名活動に協力しました。
講師のお話を伺って衝撃的だったのは、安倍首相を議長とする経済財政諮問会議において5年スパンの改革工程表が示され、主な制度改正等検討項目がすでに出されて粛々と議論がすすめられているということです。たとえば、医療費の削減で言えば、外来受診の度に1回100~500円を1~3割負担に上乗せする受診時定額負担の導入や、薬の保険給付額をジェネリックの価格とし、先発医薬品の処方を選んだ場合にはその差額を先発医薬品価格に上乗せするなど、かなり具体的に検討がされています。また、「世代間の公平」の名のもとに高齢患者の医療費や介護保険利用料負担を増やすことや75歳以上高齢者の保険料軽減を2017年度から段階的に廃止する方針も決まっているようです。また、「医療と介護の公平」という点では、一般病床の入院時の食事代の値上げや居住費(光熱費相当)負担の導入も検討されています。それに対して厚労省は入院は治療の場であって「住まい」ではないため居住費の負担はおかしいと異論を唱えていますが、阻止は難しそうです。
そもそも、医療も介護も財政的にひっ迫することは以前からわかっていながら対策が後手になってきたことは否めないと思います。クリニックがサロン化していることや薬の処方が必要以上に出され、挙句に飲み残しが多量に発生しているなど、医療関係者の意識改革や私たち自身の無駄を省く努力も必要だと思います。その上で、本当に医療や介護が必要な人に必要なサービスや医療が届くことを保障していくことが大事ではないかと思います。医療・介護は私たちの生活を支える基本インフラで、そのあり方は地域住民が決めることという講師の指摘に共感。財政先行で当事者不在の議論は的外れな制度になるのでは、と心配です。一人の患者の医療・介護・生活支援・住まい等をトータルで見ていく「地域包括医療・介護センター」を国の責任で市区町村に設置という提言も重要なポイントだと思いました。