原発事故5年半後の福島を訪ねて④

私たちに会うために雨の中駆け付けてくれた高校生たちと ゾンタハウスで

私たちに会うために雨の中駆け付けてくれた高校生たちと ゾンタハウスで

福島から岩手県山田町「ゾンタハウス」へ

視察2日目は昼前に福島を出発し、一路岩手県山田町へと向かった。山田町は津波と火災によって町のほとんどが焼失し、人口の約4.5%の方が亡くなられた。様々な状況下に置かれる子どもたちを支援するために自習室や軽食を食べてリラックスできる居場所を提供しているゾンタハウス。国際的奉仕団体の「国際ゾンタ 26 地区」からの寄付をNPO法人こども福祉研究所が受け皿となって開設した。最初は2年という区切りで始まったが、5年半立つ今も主に中高生の通う場所となっている。以前よりこのゾンタハウスの取り組みについて聞いていたが、やっと現地に足が運べた。

5年間の利用登録者は約400人。ほとんどが口コミで広がり、最初の3年間は年のべ5~6000名が通ってきた。運動部活が活発な地域で、18:30過ぎにならないと集まってこないが、来たらトーストの軽食を食べて、それぞれに自習をし、わからないところはスタッフがフォローしたりお互いに教え合ったりして、人間関係が豊かに形成されているようだ。横・縦の関係ができ、仲間がいるところに集まってくる。信頼関係ができてくると本音が出始めるとか。子ども主体に考えるスタッフの姿勢は共通しつつも、あえて考え方やスタンスを統一せずバラバラなままでいることで、子どもが自分に合った人を選んでくる、押し付けがなく、自分たちがあるがままに受け止めてもらえる信頼感があるという話は妙に新鮮だった。

運営資金は東京のスタッフが面倒な手続きがなく、使途に自由度の高い助成金を獲得してきてくれるということは、現場スタッフの負担軽減のために大事なことだと感じた。公的な補助金などは公平性や評価が付きまとうため、山田町からの予算はもらってはいない。

毎年1月に東京の東洋大学の森田明美教授が中心となって開催する3県被災地中高生意見交換会に毎年ゾンタの中高生も参加しているが、大きな成長の機会となっているようだ。

私たちが訪問した日は部活を終えて7時近くになって2人の女子高校生が駆けつけてきた。あまり時間がなくゆっくり彼女たちと話ができなかったのが残念だったが、自分たちの夢を語るキラキラした顔が印象的だった。来年の1月にまた東京で会えるのを楽しみにしたい。

5年半経過しているが、未だにかさ上げ工事や道路建設のさ中で、駅は流されたままで鉄道は開通していない。やっと復興住宅が建ったものの、仮設住宅や仮設商店街が見られ新たなまちづくりには到底至っていない。これも東京オリンピックの影響か、資材も人もとられて復興が遅れることはあってはならないことだ。9.7mの防潮堤によって海と町が隔絶され、自然との共生のむずかしさを感じた。