インクルーシブな地域社会をかたちにする その②

西荻北4丁目に開設された「オープンリビングけやきの見える家」 では落語、手品、ミニコンサートなどが行われ、近隣の高齢者が集う

地域における人のつながりが希薄ないまの状況は、人がわずらわしさを避けてきたことの結果だと思います。地域でのたすけあいや他人を気遣う配慮が失われ、孤立や孤独という不安を増幅させてしまっているように感じます。高齢者や介護する家族、子育て中の親にまつわる不幸な事件の背景に共通しているのは「孤立」です。相談する人もなく一人で重荷を抱え込んでしまう状況に陥らないよう、地域コミュニティを再生しなければなりません。そのためのきっかけづくりが必要です。

 「生活クラブ運動グループ・インクルーシブ事業連合」ではおせっかいだと言われようが、誰かが私を気にしてくれている、そんな地域コミュニティをつくりたい、そのために必要な機能を作り出すことを「市民主体のまちづくり型福祉」として推進してきました。

 その中の一つに、空き家などを利用して地域の人が気軽に集まれる拠点「まちのほっとスペース」づくりがあります。「ほっとスペース」は、歩いて行ける身近な所に、人や必要な情報に出会え、ちょっとした困りごともお互い様のたすけあいで乗り越えられる場です。

 そこには、ランチやお茶を囲みながら、訪れた人々の関係性をコーディネートする人材がいる。また、ほっとスペースが地域の多様な資源とネットワークすることで、地域全体で一人の人を支える機能となることをめざしています。

 すでに実践が始まっている「ほっとスペース」は東京都内で7カ所(東村山2カ所、国立、板橋、練馬、杉並、昭島)ありますが、実際に子育て世代から高齢者、介護者などが豊かにつながり合える空間になってきています。杉並区ではほかにもさまざまな団体や個人が運営するサロンがぽつぽつ誕生しています。これはきっと時代の要請なのだと思います。今後は、それぞれの取り組みが横につながり、情報交換ができるような場もつくっていけるとよいと考えています。