水道法改正は誰のため?② 1㎞の水道管交換に1億円!
現在の水道事業の課題として主に3つ。1つは人口減少・節水型社会の対応、2つ目は施設老朽化への対応、そして3つ目に人材不足・技術継承難への対応があると言います。家電やトイレなどの節水化がすすみ1人当たり水使用量は激減し、東京都の水道事業はこの10年で160億円も減収となっているそうです。一方で、水道管の老朽化によって更新が必要なのに、1㎞の交換に1億円かかると。そして、水道職員数はコスト削減目的でこの40年間で4割減少しており、自治体の中に水道のことがわかる人材がいなくなり、知識も技術も継承されないという問題も起こっています。
このことは水道事業に関わらず、今の自治体の行革の中で外部委託化がすすむことによる弊害とも重なります。このように収入を増やし、コストを減らさないことには持続可能な水道事業は成り立たないのだと私たちはきちんと理解しておくことが必要です。その上で昨年の水道法改正の柱の一つとなって注目されたのがコンセッション方式でした。業務委託と混同して語られることが多いようですが、コンセッションは水道事業者は自治体のままでその運営権を20年程度の長期の契約で民間企業に売却するというもので、ある意味運営を丸投げする状態です。この方式が採用されると、私たちは民間企業との間でのサービスをやり取りすることとなります。
水道施設の所有、そして管理監督責任や災害時責任は自治体、運営・利用責任は民間企業という役割分担になっていますが、自治体が管理監督責任は果たすためには、民間企業が行う水道事業の中身をきちんとチェックできる人材がいることが前提となります。先に述べた課題からすれば心もとない話で、結局民間企業の言いなりやられっぱなしとなるのではないかという懸念があります。パリ市の例では、再公営化後の調査で民間企業の利益が実際は15%のところを7%と過小報告していたことが発覚しています。民営化後23年間で174%も料金が上がっていたのにです。利益は役員報酬や株式配当などに充てられていたと思われます。情報公開もされていなかったため、最初にどのような契約をするのか、また、契約後のモニタリングがとても重要になってくるということです。自治体の関与を低くすることは、ライフラインの確保や防災上の観点からもとても危ういことになるのだということを知っておくことが重要です。
このコンセッション方式による水道事業の民営化は企業成長戦略と資産市場の活性化という安易な発想で水道法改正が行われたということがわかり、ここでもやっぱり私たち国民のことは二の次かと怒りが再燃してしまいました。私たちも自分のこと、子どもや孫のためにも、もっとしっかり勉強しておかなければです!