「暮らしの保健室」は心の拠り所

新宿区戸山ハイツの[暮らしの保健室」を訪ねた生活者ネットの仲間たちと

東京・生活者ネットワークの福祉部会で、新宿の都営戸山ハイツにある「暮らしの保健室」を視察してきました。メディアにも度々取り上げられ、注目を集めている福祉の拠点です。戸山ハイツは約3500世帯6000人が暮らしていますが、高齢化率53.6%(2017年5月)で都会の限界集落と言われてしまう団地です。そんな団地の商店街の店舗所有者との偶然的な縁があって2011年7月に開設。今も視察者が絶えない様子です。この日も山梨からいらした訪問看護ステーションの方々や看護学校の学生さんと一緒になりました。

「暮らしの保健室」は訪問看護に携わる中で、重度になる前につながる必要性に気づいた秋山正子さんが立ち上げたしくみで、NPO法人白十字在宅ボランティアの会が運営しています。医療だけでは生活課題が解決しないことがたくさんあり、生活丸ごと受け止めるために敷居の低いよろず相談所となっています。医療や介護に詳しい専門職やボランティアが常駐しているのがここの強みだと感じました。

団地の1階の商店街に溶け込み、木をふんだんに使った温かみのあるつくりは“一度入ってみたい”と思わせる雰囲気を醸し出しています。中に入ってみると床暖房入りの木の床が広がり、ミニキッチンや大きなテーブル、コーナーには相談できるスペースやちょっと休めるベッドもあり、どこかのお宅のリビングにお邪魔している感じがとてもいい。『居心地が良くて、ゆったりとした気分で、よく話を聞いてもらい、一緒に整理するところから』をコンセプトに相談は無料、予約不要、相談なくても立ち寄れる、どんな相談でもいいというのが地域に暮らす人々の安心になっています。

そして、さらにすばらしいと感じたのは「暮らしの保健室」が担おうとしている6つの機能です。①生活や健康に関する相談窓口②なじみの顔と過ごす居場所③在宅医療や病気予防の学びの場④医療や介護、福祉の連携の場⑤世代を超えてつながる場⑥地域ボランティアの育成の場であり、それぞれが「暮らしの保健室」を中心に循環し、時には他にも派生していく地域づくりが意識されています。

今やこの「暮らしの保健室」は全国に40カ所以上に広がり、ここ杉並区にも「荻窪 暮らしの保健室(荻窪家族レジデンス内)」があります。一度、戸山ハイツの「暮らしの保健室」に見学に来て、取組みに共感してくれればどこでも「暮らしの保健室」と名乗れるというゆるさからも、同じような場を広げたいという思いが現れています。

不寛容な世の中になってしまったと嘆く前に、「暮らしの保健室」のようなほっこりできる場を地域の中にたくさんつくっていけたら、暮らしの不安が減っていくのにと思うばかりです。生活者ネットワークも地域の仲間と居場所をつくってきていますが、その活動を通して地域の様々な資源とネットワークしてあらゆる相談に対応できるセンター機能の必要性を痛感しています。

公的な機関としてはケア24や今年開設する「在宅医療・生活支援センター(ウェルファーム杉並内)」がありますが、地域のたすけあいの延長線上に市民自らが生み出す機能も必要だと考えています。何でもありの心の拠り所となる場が今求められているのだと感じました。