原発事故5年半後の福島を訪ねて③

➣福島第一原発の現状と今後の対応について

避難地域となって、子どもの声が消えた山木屋地区の小学校、来年3月に避難解除となる予定

避難地域となって、子どもの声が消えた山木屋地区の小学校の前で。この地域は来年3月に避難解除となる予定

3か所の農家民宿に分泊した私たちは、翌朝再び遊雲の里に集まり、一般社団法人AFWの吉川彰浩代表理事から現在の福島第一原発の様子についてレクチャーを受けた。吉川さんは元東電協力企業の社員で第一原発に10年、第二原発に4年、発電所のメンテナンスに携わっていた方。2012年6月に退職し、現在の活動を始める。

話を聞けば聞くほど、終わりの見えない廃炉への道のりだと改めて思う。吉川さんのように福島第一原発と向き合いながら、あきらめずに前向きに「次世代に残せるふるさと創り」を実行している人がいるということが希望でもあると感じた。

一般社団法人AFWは①暮らしの視点で廃炉を学ぶ「学習支援」②廃炉が終わった後も豊かな”ふるさと”を作り上げる「地場産業支援」③原発事故被災地域の理解向上を目的とした「現地ガイド」④福島県浜通り地方の復興状況や廃炉の情報を共有する「講演会」を活動の柱にしている。

事故現場での地下水対策や増え続ける汚染水との闘いは気の遠くなるような話で、タンクをつくっては600ベクレルほどに浄化した汚染水をためているわけだが、いずれ置き場のなくなった汚染水は海に捨てられるのだという。

廃炉や除染作業など多くの人々の犠牲の上に成り立っていることや被災者の当たり前の日常を奪い去ってしまったことを考えれば、脱原発に向かうのは当然のことだが、そうはならない歯がゆさ。原発ゼロに向けた世論形成はとても重要であり、吉川さんのようなバランスのとれた活動と連携していくことが必要だと感じた。